徳島県 上勝町で本当の意味でのサステナビリティを親子で学んできました

全国でも面白い取り組みをしている自治体として、ITインフラを整備して都市圏の企業のサテライトオフィスを誘致して他ジャンルの移住者や取り組みも増えている神山町(以前行った際のレポートはこちら)と並んで、ユニークな取り組みをしている上勝町に行ってきました。

 

<上勝町ってどんなとこ?>

 

徳島県の中部の山岳地域に位置する町で、徳島県内、さらに四国の全ての町の中で最も人口が少ない町(人口1600人程度・町の公開データより)であるにも関わらず、葉っぱビジネスのいろどり、また日本で初めて「ゼロ・ウェイスト宣言」をした町として、全国に広く知られるユニークな自治体です。

 

<旅の拠点とナビゲーター>

 

今回は、上勝町にあるカフェ「cafe polestar」のオーナー東さんに現地をご案内いただきました。もうとりあえずこのカフェだけでもまずは行ってほしい!というくらいの素敵なカフェで、山間にありながら一歩中に入ると天井高の高い開放的な空間で、建材や壁の塗りにもこだわりがあるのが伝わってくる素晴らしいお店でした。(自分も都内で飲食店をやっていたのですがここまで開放的な空間は都市圏ではつくれないと思います)

山の中に突如あらわれるシックな黒い建物。

窓の開口部が広いので光が入って、山が一望できます。デザインが良いだけでなく、断熱材を厚めに入れてペアガラスにして断熱性を高めたり、暖房は薪でしたり、電球もLEDにしたりとエネルギー効率に配慮しているとのことです。

ちなみに居心地がウルトラ良いので普通に仕事持って来ても大丈夫です(笑)。

こちらがオーナーで上勝町ご出身の東さん。元々上勝町がゼロ・ウェイスト宣言をすることになったきっかけをつくったのがお母様で、その思いを受け継いでこのお店と活動をされているそうです。(詳細はこちらの記事など)

上勝町のことを何も知らない僕らにイチからご説明してくださいました。

上勝町に到着後、まずいただいたのがこちらのランチです。

地元の食材を活かしたとても美味しい食事で、一緒に行った3歳の息子も完食でした。

このランチ中におおまかなイントロダクションをいただいた後、各種アクティビティに入っていきました。今回はランチの写真にもうつっている素敵なしおりまで作成いただきました。「NEW & OLD」ということで、新しい部分・古くからある部分の両方を見せていただくという形。

<まずは上勝の歴史を知る魔女の家でティータイム>

 

最初に向かったのは上勝に住んで30年という、なんでも自分でつくれてしまう「魔女さん」のおうちでお茶をいただきながらお話をお聞きしました。

今はお一人で住まれているお宅で、薪割や畑の世話などもやれているとのこと。昔ながらの暮らしを垣間見せていただくことができました。

薪ストーブを囲みながら魔女さんのお話を聞くのはすごく豊かな時間で、都会の思考や感情のフレーミングから離れた状態で、魔女さんのこれまでの人生やそれについての考え方などをお聞きするのは素敵な時間でした。

と書きつつ、息子が猫に夢中になってしまったので後半ほとんどお話聞けませんでしたけど(笑)。でも息子は猫と触れ合えて満足そうでした。

こんなの、なかなか撮れない写真です。

<話題のブルワリーの次の展開、KAMIKATZ STONEWALL HILL CRAFTS & SCIENCE>

 

上勝町の名前を全国に知らしめることになったきっかけのもう1つ(特に飲食店関係者や飲食好きにとって)は、これまでずっとトレンドを牽引してきているトランジットジェネラルオフィスが2015年にクラフトビールブランド〈KAMIKATZ RISE & WIN Brewing Co. 〉と マイクロブルワリー・ストア〈RISE & WIN Brewing Co. BBQ & General Store〉を上勝町で立ち上げたことでしょう。実際自分も、このニュースから「上勝町ってどこだろう」と思った人間の一人です。

今回見学させていただいたSTONEWALL HILL CRAFTS & SCIENCEは 2017年10月にできたばかりの第二醸造施設で、イギリスで現代美術の賞をとった建築集団がつくっています。

詳細はこちらの記事を見ていただくとして、元製材工場の中を改装してここまでかっこいい建物ができるのかとびっくり。醸造タンクが並んでいるエリアはさすがにピカピカでしたが、それ以外のエリアは元々廃棄予定の材などを使った古いものと新しいものが融合している形で、すごく雰囲気がありました。この山間のブルワリーのオープニングはDJも入れてパーティーをやったということで、天井が高いのでそういうイベントもすごく楽しそうでした。良くも悪くも圧倒的な異彩を放っている空間で、飲食・デザイン・建築などが好きな方はぜひ行ってみることをおすすめします。

上勝特産の果実、柚香(ゆこう)やコーヒースパイスなどを隠し味にしたビールは実際に現地で買って飲んでみたらすごく美味しかったです。クラフトビール・地ビールはいまや全国にあふれていて自分もよく飲みますが、これは頭1つ抜けてる美味しさでした。

<夕食は山間のイタリアンレストランで>

 

今回の旅はどこに行ってもすごく感動と発見がたくさんあったのですが、特にこのレストランはすごくびっくりしました。元アルケッチャーノで働いていたシェフの方が独立して出されたイタリアンなのですが、正直最初に外から見た時は「ここにお店があってちゃんと営業していけるのだろうか」と感じるくらいひっそりと佇んでいました。(外観などはこちらから)

が、中は良い意味で昔のおじいちゃんおばあちゃんの家にあがらせてもらったようなリラックスできる空間で、畳に座りながら素晴らしい料理をいただくことができました。地の素材そのものも素晴らしいのですが、プレゼンテーションがとても素敵で、単純なお皿だけでなく木や石を使ったり、お肉にも沢庵を合わせてみたりと、いわゆるイタリアンのイメージを覆す料理の数々でした。元々比べるものではないと理解しつつも、それでもあえて言わせてもらうとこのレベルの料理は都心でもなかなか食べられないですね。

 

息子はお店の高そうなクルマの玩具を見つけて無理やり遊ぼうとしたり、みんなのデザートを狙って歩きまわったりと大暴れでしたが(笑)、皆さんのご協力のおかげでなんとか事なきを得ました・・・。この時間に東さんに上勝町のことをフランクに色々とお聞きできたりと、とても濃い時間でした。

<宿泊は温泉地に隣接するキャンプ場で>

 

贅沢にも今回は温泉とアウトドアの雰囲気まで楽しむことができました。川沿いにある月ヶ谷温泉という温泉宿で温泉に入ることができ、さらに川を挟んで向かいのコテージ&キャンプ場の「パンゲアフィールド」というところに今回は泊まらせてもらいました。

手前の玉ねぎみたいな形のかわいいテントが女子チームのグランピング、奥の建物が男子チームのコテージでした。差別ではありません(笑。

これまで自分はグランピングとうたう施設にたくさん行ってきて、たいていのところはただテントが最初から張ってあるだけだったり、施設が古くて全然ゴージャス感がなかったりとガッカリすることが多いのですが、ここは違いました。本気のグランピングでした。

ふかふかのベッドあり、オットマン付のチェアあり、薪ストーブとコーヒーセットあり、とまさに至れり尽くせりでした。自分が特に感動したのは熱源が違う種類で複数あること。2月の山間ということで夜は冷えることが予想されるので、熱源が1つだとかなり不安です。電気、薪、ストーブなど複数あれば夜中に何かあっても安心して眠ることができます。ここは女性の初のキャンプ・グランピング体験としてはすごくおすすめです。今まで行った中で一番きちんと「グランピング」になっていました。

ちなみにパンゲアフィールドのメイン棟には簡単なボルダリング施設や大きな黒板があったり、さらに敷地内にヤギや大きな犬、猫もいたりして、子どもも全然飽きずに楽しむことができました。

翌朝は贅沢にもオーナーさんが外のアウトドアグリルで焼いてくださったふわふわのフレンチトースト。新鮮なサラダも美味しくてとても豊かな時間でした。

<2日目はちょっとしたアウトドアアクティビティからスタート>

 

2日目の朝は、空海も修行したと言われる凄まじい落差の滝「灌頂ヶ滝にみんなで登ってみました。動画を見てもらうとわかるのですが、正直、足を滑らせたら大人一人でも死ぬかもな、というくらいの傾斜で、これを息子を肩車して登ったのは今思い出してもスリリングな体験でした。灌頂ヶ滝というのは「頭から霊水をいただく」という意味があるらしく、さらに時間帯によっては虹が見えるとのことで、脚力に自信がある方にはぜひおすすめします。

<そしていよいよゼロ・ウェイスト施設の見学へ>

 

そもそも、ゼロ・ウェイストとはなんでしょうか。わかりやすく言うと「浪費・無駄・ゴミをなくそう」という運動で、海外では多数の自治体が宣言をしているこちらのゼロ・ウェイスト宣言を、上勝町は日本で初めて、平成15年に行いました。サイトから抜粋すると、以下の骨子が書かれています。

未来の子どもたちにきれいな空気やおいしい水、豊かな大地を継承するため、2020年までに上勝町のごみをゼロにすることを決意し、上勝町ごみゼロ(ゼロ・ウェイスト)を宣言します。

1 地球を汚さない人づくりに努めます。
2 ごみの再利用・再資源化を進め、2020年までに焼却・埋め立て処分をなくす最善の努力をします。
3 地球環境をよくするため世界中に多くの仲間をつくります!

正直に言って、この宣言だけを見ると、「エコ・自然好きの人が言っているなんとなくゆるい活動」という風に解釈できてしまうかもしれません。実際自分も行くまではそうでした。

しかし、自分が今回上勝町で実際に見て聞いて感じたのは、ゼロ・ウェイスト運動はいわゆる思想としてのエコ・ロハスといったようなことではなく(もちろんそれも背景にあるのだと思いますが)、自治体としての生存戦略であること、さらにその実現には町民の主体的な行動が最も重要なファクターである、という2点でした。

順を追って説明します。まず、こちらがゴミステーションです。通常のゴミ収集所と違う点は大きく3つで、まずゴミの分別種類が日本一細かいこと。現在は45種類に分別しているとのことで、実際かなり細かくゴミを置く場所が分けられていました。(実際の分別ガイドはこちら

次に、まだ使えるもののリサイクルがこの場で行われていること。単なる「ゴミ捨て場」ではなく、住民がいらなくなったものを置いておくと、それをほしい他の住民が持っていくことができます。

特に感心したのは重量ベースで「自分が持ち込んだ分」を「持って帰っていい」という「くるくるショップ」。まだ使えるおもちゃや日用品などがたくさんあって、重量制限にひっかからない(軽いものは持ち込まなくても持って帰ってもいい仕組み)軽いおもちゃを息子の教育のために1つだけ持って帰らせました。ふだん、どうしてもおもちゃを「新しく買って」しまうのですが、子どもなのですぐに飽きてしまい、結局捨てることになります。こういうった仕組みであれば、自分が今何がほしくて、何がいらないのか、という判断をすることができます。ゴミを減らすためには、「捨てない」の前に、そもそも不要なものを「買わない」という点が大事ということを、自然な形で教えてくれます。さらに、リサイクル品を使ってリメイク商品をつくって販売しているとのこと。

東さんが着てらっしゃったこちらの素敵なパーカはなんと鯉のぼりの生地だそうです。どうりで目のようなものがついてると思いました(笑。

最後に、基本的に町のゴミ収集所はこの1か所で、住民が自分でゴミを持ってきて、分別して捨てるということです。他の自治体のように、ゴミ収集車が町を回って回収するということは行っていないとのことで、高齢の世帯など実際にここまで来るのが難しい家庭に対してのサポートは別途行っているものの、それでも原則としては「ゴミを出す人が自分で分別して自分で持ってくる」という基本ルール。

ここに、最初に言った「ゼロ・ウェイストは自治体としての生存戦略であること、さらにその実現には町民の主体的な行動が最も重要なファクターであること」が関わってきます。

自分がお話をお聞きして一番びっくりしたのが、ゴミ処理にかかるお金の大きさでした。このゴミステーション単独で見ると、ランニングコストが年間2000万円ほどかかるのに対し、リサイクルによる売上が300万円ほどなので、単純に見ると1700万円の赤字となります。「なんだよこれだけみんなで頑張って赤字かよ」と思うかもしれませんが、焼却炉をつくると1つあたりだいたい40億円ほどかかり、さらにランニングで年間1〜2億円、それに加えて人件費がかかるという構造で、莫大な負担が自治体にのしかかります。これを上勝町は1700万円で回せていることで、当然財源を他のことに当てることができます。自治体にとってゼロ・ウェイストが生存戦略であるというのは、人口が減り税金が減る中で、住民サービスの領域をフォーカスしていかないといけない中での戦略的選択と解釈できるという意味です。(なお、より細かい説明と歴史的な経緯はこちらにまとまっています。元々のゴミ処理の方法だった野焼きが禁止されたことがきっかけだったこと、コンポストや生ゴミ処理の徹底が現在の住民による細かい分別ができる状態につながっていること、まだ町内で100%処理を行うことはできず一部町外でコストをかけて処理を委託していることがまとめられています)

この観点に立つと、「細かい分別を町民にやってもらう」というのは、自治体側から言えばゴミ処理にかかるリソースを減らし、その処理費用を最小化するためのタスクをアウトソースしていることに他ならず、それによって結果的に限られた財源を有効に使えて、町民の利益になるという構造です。

年間数千人の視察が上勝町に来ているのも、この縮小していく財源の中で住民というリソースをきちんと活用することができる、いわゆるエコ的な意味でのサステナビリティだけでなく、経済・社会的な側面でのサステナビリティを実現しようとしているからだと感じました。

当日はパンゲアフィールドのオーナーにすごく詳しくご説明いただきました。本当に感謝です。

<旅は終盤へ>

 

ゼロ・ウェイストの視察を終えたら、旅はいよいよ終盤です。お昼は釣り堀と足湯が併設されたお店で自分で釣った魚を食べたり。

cafepolestarに戻って薪ストーブの使い方をみんなで研究したり、ゆったり過ごしました。

<上勝町で学んだ、本当のサステナビリティについて>

 

女子チームがリメイク生地を使ったオリジナルブックレットをつくっている間に、落ち着きのない息子を外に連れ出して(笑)遊んでいると、上勝町に点在しているアート作品に遭遇しました。(上勝町にはこのプロジェクトでアート作品が点在しています)

なにげなく眺めていたのですが、上勝町に実際に暮らしている人の「過去の記憶」と「未来への思い」を綴った言葉に衝撃を受けました。

「この土地を開墾した先祖は、元の原野になりつつあるこの限界集落をどのように見ているだろうか」

ゼロ・ウェイストの話を聞いたことと合わせて、最後にこの言葉に頭を殴られたような衝撃を受けました。

都市で生活していると、「自然は尊い」「エコは素敵」「サステナビリティは大事」といったようなヌルい「なんとなく」の感覚を持ちます。しかしあまりにも当たり前ですが、自然は人間のことなど容赦しません。人が少なくなれば、人の手が入らなくなれば、人間が自分たちの領域だと思っていたエリアまで侵食してきて、放っておけば開墾前の状態に戻ってしまうでしょう。それは上勝町だけではなく、全国で起きている事象だと思います。

それが良い・悪いという話ではなく、人間が人間らしい生活を続けたいと思った時に、今までしてきたことの何を変えていき、何を変えないことで本当の意味でサステナビリティがあるのか。「自然を大事に」「エコな生活は素敵」といったような「価値観」ではなく、「生存戦略」としてどのような戦略をとりうるのか、ということを考えさせられました。時代を遡れば、この地への開墾も「生存戦略」だったわけで、じゃあ今の時代においての生存戦略を考えることで未来が開ける、そのためのヒントが上勝町にはある、と強く思いました。当たり前ですが戦略は実行を伴って初めて意味があります。住民と行政が方向性を合意し、1つの方向に向けて進んでいる。素晴らしい学びがありました。

<終わりに>

 

cafepolestarの東さんのお母様は、「上勝町にはいつか必ずたくさんの人が訪れるようになる、その時のためにみんなが集まれる場所が必要だ」という風におっしゃっていて、それを娘の東さんが形にしたというお話をお聞きしました。

実際にpolestarに足を踏み入れると、とてもあたたかい、迎え入れてくれている空気をすごく感じます。それなりに全国各地に行っている自分ですが、こういう雰囲気の場所は初めてでした。

思いがある人が行動を起こすことで、そしてその思いを引き継いでいくことで、未来が開かれる。その未来からは、その地域だけでなく他の地域が学ぶべきことがたくさんある。そういうことを改めて感じました。

人の思いと知恵、未来を切り開いていく力、そして美味しいごはんとアウトドア体験を楽しみたい人はぜひ上勝町に行ってみてください。必ず学びがあると思います。

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