北アルプスでアートとアウトドアを通して地域を発見する旅 Vol1. 北アルプス国際芸術祭編

先日、茨城県北芸術祭に行ってきてそのスケール感にしびれ、芸術祭って単純にアートに触れることができるだけでなく、同時にその地域についてたくさんのことを学べる良いイベントだなと改めて思っていたところ、北アルプス国際芸術祭というものが開かれるという話を聞きました。

「すごく面白そうだけど、アルプスってアクセス大変そうだし、山の移動なんて自分にはハードルが高い・・」と思って二の足を踏んでいたところ、なんと以前お仕事でご一緒し、さらに東京で開催された地方創生系のイベントMICHIKARAでもお会いした大町市役所の小澤さんが関わってらっしゃるということで、幸運にもご案内いただき、4歳の息子と一緒に北アルプスエリアでアート、そしてアウトドアアクティビティを満喫させていただきました。

■まずは芸術祭の概要

最初に、改めて北アルプス国際芸術祭 について整理をしておきます。

正式名称:北アルプス国際芸術祭2017  ~信濃大町 食とアートの廻廊~

会期:2017年6月4日(日)〜7月30日(日)[57日間]

会場:長野県大町市を中心とする5エリア(源流エリア, 仁科三湖エリア, 市街地エリア, 東山エリア, ダムエリア)

名誉実行委員長:阿部守一(長野県知事)

実行委員長:牛越徹 (大町市長) 

総合ディレクター:北川フラム  

参加アーティスト:36組

芸術祭メインテーマ:

“北アルプスの山々から流れほとばしる伏流水、山の神や動物たちと人が出会う豊かな扇状地に囲まれた信濃の国、大町市。そこは日本列島を東西に分断するフォッサマグナの西の縁に位置し、信州と日本海を結ぶ「塩の道」が走り、東西の地質や植生が出会う、まさに特異点と言えます。北アルプス国際芸術祭は、扇状地をつなぐ廻廊から山々を見遥かし、青い天空を水場から仰ぐ試みです。国内外のアーティストは、南北の植物が混生し、日本列島を縦に貫く特徴ある地形、歴史に向き合い、鮮烈で爽やかなアート作品をつくりだすでしょう。〈北川 フラム〉”

(出典元:北アルプス国際芸術祭2017  ~信濃大町 食とアートの廻廊~ 公式サイト 芸術祭概要より http://shinano-omachi.jp/about-jp/)

■個人的な一押し作品たち

芸術祭のどの作品も素晴らしいのですが、まずは特におすすめの作品を紹介します。全ての作品を見て回れたわけではないので、あくまで自分が鑑賞できた中でという形です。

<東山エリア>

花咲く星に」/青島左門 作

毎週金・土・祝前日の20:00-21:30しか見ることができないという、とてもレアな作品。人工的な光が届かない高原エリアにLEDを入れた生花を無数に配置し、夜空に浮かべています。見方によって星のように見えたり、ホタルのように見えたり。実際に自分が見た時は満月のような大きな月が煌々と照っていて、その光の中で見る花たちは本当に美しく、幻想的でした。

風のはじまり」/リー・クーチェ 作

森を進んでいくと突然あらわれる、まるで龍のような巨大な木の造形物。風や台風を模してつくられた渦巻きのような作品で、中に入って歩くこともできる、凄まじいスケールの作品で、これが全て人力でつくられたというのがにわかに信じられません。

信濃大町実景舎/目作

高台にある家が白い繭のような造形物に囲まれて、どこから入ってどこから出るのか、まるで迷路のような白い空間を進んでいくと眼前にいきなり信濃大町の美しい景色が飛び込んできます。まるでアトラクションのような作品で、子どもにも大人気。

集落のための楕円/フェリーチェ・ヴァリーニ作

「ここに一体何があるんだろう」という感じで集落を歩きながら、ある地点で振り返ると、見たこともない楕円がいきなり目の前にあらわれる。視線の位置が少しでもずれるとキレイに見えません。なにげない景色の中にいきなりこれまで見たこともない、カテゴリー分けすることもできない「何か」を出現させる。これこそアート。

<源流エリア>

 「ACT」/マーリア・ヴィルッカラ 作

実際に使われている森林劇場(屋外ステージ)を舞台にして、水が吹き出したり、水槽が展示されていたり、屋根から落ちてきてタライのようなものに当たる水滴の音を聞いたり、ピアノを弾いてみたり。普段は見ているだけのステージに上がって、自由にそこにあるもので遊んで、その反応や動きを楽しむ。素敵な作品でした。

<仁科三湖エリア>

アルプスの湖舟/杉原信幸 作 

信濃大町に実際に暮らす作家がつくった、湖面に映った倒立したアルプス。巨大な木造の美しい建築の中につくられた布のような作品で、そのスケールだけでもびっくりなのですが、さらにびっくりなのが近づいてみるとお米でコーティングされていること。北アルプスでの暮らしが、自然と人間の営みが絡まって成立していることが伝わる、素晴らしい作品でした。

ウォーターフィールド(存在と不在)/アルフレド&イザベル・アキリザン 作  

木崎湖に浮かぶ、たくさんのボート。遠くからぱっと見ると普通のボートに見えますが、よく見ると全く違うことがわかります。信濃大町エリアで実際に人々の家の倉庫に眠っていたずっと使われていなかったもの、不要なもの、土地の木々などが組み合わされた、端的に言えば「不要なものからつくられたボート」です。これだけでも十分にメッセージ性がありますが、これが「どこか他の場所につながっている海や川」ではなく、ある意味でどこにもたどり着きようがない湖に浮いて「とどまっている」という光景が、さらにメッセージ性を強くしている気がしました。

<市街地エリア>

ちかく・とおく・ちかく/ニキータ・アレクセーエフ作

非常に深い意味合いとコンテクストを持った作品だと思うのですが、まずは108枚のドローイングがとにかくかわいい。そして街中に貼られたそのドローイングを子どもたちと一緒に探すだけで、すごく楽しいです。息子が「ちかい、とおい、わかい」と間違えて覚えていたのがツボでした。

たゆたゆの家 (原倫太郎+原游)

色々な要素が合わさった作品でしたが、とにかく巨大なシャボン玉製造機が子どもたちに大人気。

北アルプス 高瀬川庭園 /高橋治希作

北アルプスを流れる高瀬川という川の流れを磁器であらわし、さらに植物の花などの造形は単なる飾りではなく、実際の植生に合わせて、この作品の中で高さがあるところでは高山植物が茂り、低くなるにつれて植物が変わっていくという構成。自然をミニチュアで体験するという箱庭的な要素と、儚くて今にも壊れそうな磁器の繊細な美しさが合わさった素晴らしい作品。

もうこれだけは体験してみてくださいとしか言いようのない、とにかく異様なエネルギーに満ちた「セルフビルドお化け?屋敷」的な作品。自分もそれなりの数のアート作品を見てきたと思って生きてきましたが、これは本当にヤバかったです。とにかくごちゃまぜの世界観で、この中に一つの宇宙があるような気すらしてきます。面白いのがその宇宙が開かれていること。作家さんが一人で作り上げたのではなく、地元の人が家にある卵の殻をみんなで持ち寄ったり、壁の絵を描いたりと、みんなで協力してつくりあげたそうです。みんなでこれだけ変なものをつくりあげるそのエネルギー。すごいです。このエネルギーに感化されて、作品が展開された屋敷の隣にある洋品店でTシャツを買ってしまいました。何の変哲もない洋品店で、このすごい世界観のアーティストのTシャツやグッズが売られているのがまたシュールでたまりませんでした。

■子どもと一緒に芸術祭を楽しむコツ

子どもと一緒にアート鑑賞をするというのは、親にとってはなかなかハードルが高いことは間違いありません。でも、美術館やギャラリーのような場所ではなく、基本的にオープンなスペースで広々と楽しめる芸術祭であれば、そこまで神経質にならなくても、子どもものびのび楽しめるのが素晴らしい特徴の一つだと思います。その上で、自分なりに発見したコツを。

・(ある程度)子どもの好きにさせて子どものリズムに合わせる

子どもはこちらの常識やアート作品への思い込みなどなく行動するので、作品をスルーしたり逆にすごくこだわったりしますが、元々アート鑑賞に「こうあるべき」というルールはないので、もちろん最低限の作品や他の人へのマナー・ルールは守りながら、ある程度子どもの好きにさせて、とにかく楽しんでもらうようにしました。子どもにとっては「作品」という概念はあまりなく、全ては「場」なので、その「場」を楽しむという意味ではむしろ大人よりも上手なくらいで、子どもから学ぶこともたくさんありました。

・スタンプラリーなど子どもが好きそうなものを活用する

子どもはアートを「感じる」ことは大人以上にできても、「一つ一つの作品を短い時間で切り上げて次に移動する」ということの必要性が理解しづらく、いやがります。そういう時はうまくパスポートのスタンプラリーなどを使って、ゲーム感覚で「次はどのスタンプがもらえるかな〜」と励ますことで次に進むようにしました。森の中や湖のそばでスタンプが押せる場所を見つけた時は嬉しそうに誰よりも早く走っていっていました。今回はコンプリートできませんでしたが、アートサイトNo.1~34(イベントを除く)のサイトすべてをスタンプラリーで巡ると、もれなくクリアファイルがもらえるようです。

ちなみに芸術祭のモチーフデザインはテキスタイルで有名なミナペルホネンの皆川明さんで、とてもかわいらしくキャッチーなデザインで、思わずグッズを大量に買ってしまうほど親子ともどもお気に入りでした。

北アルプスでアートとアウトドアを通して地域を発見する旅 Vol1. 北アルプス国際芸術祭編” への1件のフィードバック

  1. すべての作品を見終わったときに、まだまだ満足していない自分に気づきました。
     青島左門さんの作品「花咲く星に」を見たときはストロベリームーンが輝く中でした。
    月のない夜や、星がない曇りの夜などの違うスチュエーションでもう一度見てみたいと思い車を走らせていました。
    霊松寺の高橋さんの作品も、何度もお客様をご案内するたびに新たな感動を覚えたものです。
    様々な環境の変化に姿を変えて見せる屋外作品は、今回の起きたアルプス国際芸術祭の花であったろうと思います。
    残雪を抱く北アルプス、奥深い里山や集落、田畑に3本もある一級河川、湧き水から産まれる仁科三湖など
    この素晴らしい環境から産まれるアーティストの「地域への思い」は素晴らしい結果をもたらしました。
    そのプロセスや結果を共有した市民たちが、さらに強い地域愛に目覚めた後の「新しい大町」に大いに期待したいと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA