徳島県で今起きていることを見てきました 神山町 FOOD HUB PROJECT 編。

神山町というとITというイメージがありますが、今まったく別の分野で、まさに現在進行形ですごく面白いことが起きています。”地産地食|Farm Local, Eat Local”というのを合言葉にした、Food Hub Project です。

<プロジェクトの概要>

詳細な説明はプロジェクトが生まれた経緯のページを見ていただくのが良いと思いますが(すごく良いのでぜひ読んでみてください!)、わかりやすく言うと、

・「地産地消」というコンセプトに近いが、ただ地元の食材を使うだけでなく、お互いの顔が見える関係の中で食材の調達や販売を行う

・そのことにより、「食べる」という行為を通じて、町の中での経済の循環を起こす

・「消費」の仕組みを整えるだけでなく、「生産」の方も実際の農業をプロジェクトとして手がけること、それを通じて地元の農家の育成も行うことで、継続的に生産と消費が回り続ける仕組みをつくる

・これらを通じて、地元に眠る食文化を復活させ、現代の「日常」に定着させる

・これらがもしうまく回るならば、神山町以外の日本中どこの町でも成立する、スケールするモデルとなる(元々経済圏が地元で回ることを想定するため、外部環境の影響を受けずに独立した経済が循環する)

ということだと僕は理解しました。

(出典: Food Hub Project オフィシャルサイトより)

僕が訪れた1月末の時点では、まだフルオープンしておらず色々な施設をつくっているところでしたが、そのリアリティが今まさに何かが生まれようとしている熱が感じられて、最高でした。

<地元の人のための食堂とパン屋>

メインとなる「かまや」。いわゆる食堂ですが、特徴的な「かま」が正面に3つ並んでいます。こちらも地元の文化とリンクしています。

(出典: Food Hub Project オフィシャルサイトより)

お伺いした時は時間的に難しかったのですが、当日のランチメニュー。

食べられなくて悔しいので Food Hub Project のinstagramから拝借(笑)。美味しそう。

料理だけでなく、トレイなども元々林業が盛んな神山町の特徴を活かして地元の素材でつくられています。

個人的に感動した椅子。杉素材なので本当に軽かったです。こちらは神山の林業活性化委員会と連携し、地元の素材を市内の合板製造の会社に買い取ってもらって、県外の作家さんにつくってもらっているとのこと。ふつうは「地元の素材を使った良いものが遠くで使われる」というのが常ですが、ここは地元の素材を使った良いものが地元の人のために使われる、という循環が起きています。

また、店内で使われるお皿には地元の製法でつくられた焼き物も使われているとのこと。こちらはまだ最終の色味ではないとのことでしたが、遠近 をちこちという素敵なお店をやられている神山出身の東尾厚志さんがプロデュースされていて、土の感じがしっかりあって素敵でした。かま屋のように日常的に使うお店で、しかも惣菜を取り分けるスタイルならば、こういう大きめの皿が全体の表情をつくると思うので、それも地元を感じられるというのは本当に素敵だなと思います。

そして、お伺いした当日がまさに物件引き渡しだった、同じ敷地内に新しくつくられたパン屋さん。設計は地元神山で活動されている島津臣志建築設計事務所の島津臣志さん。地元の杉材を使って地元の大工さんと協力しながら手刻みでつくられたそうです。

毎日通う場所であることを想定した、シンプルだけど温かみのある建物。

今はパンや商品が入ってこんな感じだそうです。いやーたまらないですね。

<顔の見える距離にある農業>

そして、Food Hub Project のオフィシャルサイト のランドスケープデザインにもあるように、同じ敷地内に実際に畑があります。ちなみにこのランドスケープデザインは、福岡の天神のど真ん中にいきなり緑の山ができたような屋上緑化で有名なアクロス福岡や遠野のクイーンズメドウ・カントリーハウスで有名なプランタゴの田瀬理夫さん、食堂の設計は中原慎一郎さん率いつ Landscape Products とのことで、通常の飲食店などではありえないほどの複雑な要素が絡んでいながら、一つ一つがバラバラになっていないように感じるのは、さすがと言わざるを得ません。

(出典: Food Hub Project オフィシャルサイトより)

当日、神山町役場からプロジェクトに出向という形で現在農業長として農業部門をリードされている白桃さんに畑をご案内いただきました。

常々テレビとかでよく「畑でとった野菜を食べてあまい!とか言う」シーンを見て「やらせでしょ」と思っていたのですが、ここでいただいたカブ、めちゃくちゃ甘くて美味しかったです。その場でとって、その場で洗って、その場で食べる。こうやって「食べる場所」の「すぐとなり」でそれが体験できるというのは、「顔が見える関係」というのをつくっていく上ですごく大きいと思いました。

ちなみに白桃さんは、役場勤めをされながら、このプロジェクトに関われないのならば役場を辞めてでもやりたい、というアツい思いでやられている方で、お話、めちゃくちゃ面白かったです。こちらのインタビューもぜひ読んでみてください。

Food Hub Project では、この敷地以外でも神山町の特徴である石垣を活かして、ビニールハウスと石垣を組み合わせて、熱効率がよくなる農業にもトライされていました。すごいビジュアル。

<プロジェクトのユニークさと社会的意義>

陳腐な言葉ですが、本当にすごい取り組みだと思いました。Food Hub Project のサイトには、プロジェクトについてこのように書いています。

“始まりのきっかけは、神山町地方創生戦略を考えるワーキンググループ。神山町役場と住民が一体となり2015年7月〜12月末までの約半年間行われました。

その後、2016年4月に神山町役場と神山つなぐ公社、㈱モノサスが共同で会社として設立しました。

日本の中山間地域では、農業者の高齢化、後継者不足による耕作放棄地の増加、それにともなう鳥獣害の被害などが大きな社会問題になっています。

神山の農業従事者の平均年齢は71歳です。

そんな日本のどこの田舎にでもある課題を 小さいものと、小さいもの 少量生産と少量消費 をつなぐ というシンプルな活動を通じてみんなで解決して行こうというのがフードハブ・プロジェクトです。

地産地食|Farm Local, Eat Local.”

上にも書かれていますが、日本の中山間地域の課題はある程度似通っています。これらの課題に対して、生産側は統合して規模を拡大し、消費側は都市圏を狙って商圏を広げるというのがよくあるアプローチなのですが、このプロジェクトは違います。

外を見るのではなく、農業と消費、その間を取り持つ食べるという行為、その結果としての経済、それらを町の人たちで、地域の中で、回す。

このコンセプト自体がまず素晴らしいですが、当然ながら実際にやるのは極めて困難です。それを実際に覚悟を決めて形にしているのが本当に素晴らしいなと。

成り立ちとして、役場と住民が一体となって地域の戦略を考えるワーキンググループから生まれているということは、つまり最初から地域のニーズや住民のやりたいことが要素として入る仕組みがあるということで、決して行政主導ではないんだなと。さらに、その後できちんと民間の会社との合同の会社として、行政も主体となった上で、事業として運営されています。

事業として運営される以上、プロジェクトのスコープとしての商圏が最初から限定されていることは経営面での大きなハードルだと思うのですが、そこは覚悟が決まってます。

現時点では町民限定公開であることに加えて、さらにかま屋では町民向け企画とそれ以外の人で価格設定が違います。さらに、地元の人や地域に住んでいる人だけが使える会員カードやランチ券も。

いわゆる住民向けの行政サービスとなると、税金を財源としてビジネスを度外視した形で行われます。一方で完全にビジネス一色だと、ここまで長期的な投資を含むコンセプトで事業を立ち上げるのは難しかったと思います。このあたりは、行政も主体として入り、でも民間として運営されるという構造のユニークさだなと思います。

今回ご案内いただいたのは、僕が東京で小さな飲食店をやっていた時代からお付き合いがあった(株)モノサスの真鍋さんです。このプロジェクトを民間側でリードされていて、以前はDEAN&DELUCAをはじめとする素晴らしいお店やNomadic Kithenというイベントなどをたくさん手がけられていました。その彼が神山町に移住したと聞いて、いったい何を始めるんだろうとずっと気になっていて、発信されている情報をせっせと読んでいたのですが(真鍋さんの書く記事はどれも素晴らしいのでぜひ)、読んでいる途中で興奮してきて、いても立ってもいられずに今回無理を言って押しかけてしまいました。どうやら、すごいことを始めようとしているなと。

「日本の中山間地域に共通のマクロな課題」を、「日常で使われる店舗と食材の生産現場」というミクロに落とし込んできちんと形にし、さらにそこに美しいランドスケープやデザインという現代的かつロングラスティングな要素と、地域に古くから伝わる食文化を組み合わせる。

いろいろなことがこんがらがってできている社会的な大きな課題を、「食べる」という人間の最も根源的で最も日常的でシンプルな行動で解決していく。

これからの日本の各地域にとってめちゃくちゃ参考になることが、いま神山町で始まっています。

Food Hub Project の最新情報は Facebook / Instagram でどうぞ。

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