KENPOKU ART 2016 茨城県北芸術祭に行ってきました Vol.2 御岩神社から常陸太田エリア編

常陸多賀を満喫した後は内陸エリアへ。常陸多賀は思いっきり海沿いの場所だったにも関わらず、車でしばらく行くといきなり山の中になりました。失礼ながら茨城県って自然に溢れた土地というイメージがあまりありませんでしたが、実際には海と山の両方を短い移動距離で楽しめる県でした。

素敵な山並みを眺めていると、KENPOKUのハイライト作品の一つとして色々なメディアに登場している「杜の蜃気楼」のある御岩神社に到着しました。非常に由緒正しい神社で、パワースポットである岩を目指す人、紅葉や自然を楽しむ人、ふつうに神社に参拝しようとする人などで賑わっていました。ただ歩くだけでも気持ちいいです。

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推定樹齢500年の三本杉。すごい迫力。

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芸術祭の作品を見に来たことを忘れるくらい、神社の雰囲気を楽しみながら参拝客らしき人たちと一緒に歩いていると、遠くにアート作品のサインが。

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一つ目の作品は、神社の天井画がそのままアート作品になっている「御岩山雲龍図」

実は、最初はその存在に気づかず、「せっかく神社の来たんだし」ということで普通にお賽銭を入れてお参りしていると、県の方から天井を指差して「実はこれも作品なんですよ」と言われてびっくり。モチーフは見覚えのある龍ですが、昔は龍を地上から見上げる画だったものが、現在は技術の進化で宇宙から衛星などで地上を見下ろすことができ、龍も見上げるものではなく見下ろすものだという形で、この時代につくる画として龍の下に雲がある形になっています。面白い。

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そして、さらに奥に進むと、姿をあらわす「杜の蜃気楼」。とても綺麗な発色と軽やかな素材で、風の中で光を浴びてキラキラ揺れている様子が美しかったです。

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下から見ると、独特の素材と形状。こちらも他の作品と同じく、神社という文化的・歴史的に非常に大きな意味を持つ場所の中で、自然に溶け込みつつ、かつ自然だけではない独特のニュアンスをそこに確かに加えるアート作品でした。

なにがすごいって、とても由緒正しい神社であるにも関わらずこういう作品の設置を許可した神社の方々、そしてここだけでなくきっと色々イメージがあるが故に無茶を言うであろうアーティストと土地や建物の持ち主との間に立って交渉した県や実行委員会のみなさんの交渉力、本当にすごいと思います。

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そして、次に向かったのは内陸にある常陸太田市。ここは街の中の作品群が、作品として独立してあるのではなく街の歴史やそこで暮らしている人たちと相互作用を及ぼしながら成立していて、すごく感動しました。

街の人の声を可視化する「サインズ オブ メモリー 2016 鯨ヶ丘のピンクの窓」

街の建物の至るところに、「街の人の声」がピンク色のボード的なものに書いて貼り出してあります。これがめちゃくちゃ面白くて、時間さえあれば全部じっくり読んでまわりたいくらいでした。最初はお店や公的な建物など、「ある程度街に対して開かれた場所」だけが参加しているのかと思ったのですが、街を回っていると普通の民家の方も参加していることがわかりました。

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すごく個人的な記憶、思い、家族など親しい人への感謝などが書いてあります。普段はおそらくあまり外に出していないであろう素直な思いを言葉にして、それを外部から来た人が「アート作品」として鑑賞する。

極めて個人的なひとりひとりの記憶や思いが、普遍的な価値を持って人の感情を揺さぶるという、素晴らしい作品でした。

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他にも素晴らしい作品がたくさん。

1日の時間の使い方を色で分けて、様々な人(と動物)の1日を色で可視化した「Life Stripe」

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自由に物々交換ができるお店のようなスペースそのものが作品になっている「リビングルーム鯨ヶ丘」

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そして、僕がこの芸術祭で最も衝撃を受けた作品「何処からの手紙」

この作品は、希望した人が申し込みをし、郵便局長から手紙を受取り、その手紙に書いてあるストーリーと地図を片手に実際にその場に行って体験する、という体験型の作品。今回は特別に県の方の取り計らいで見せていただいたのですが、今回はこれについては書かないことにします。作品の性質から言って、あまりつまびらかにすることが良いことではないように思えますし、また内容があまりに衝撃的で、自分の中で十分に言語化できてないためです。

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常陸太田市を離れて、自然あふれるエリアを進んでハイライトの一つ、「ART ZOO サファリパークプロジェクト in 常陸太田」へ。

ここは開けた眺望が素晴らしく、そこからあたりを見渡すと普通に人が暮らしている民家の畑にも作品が置いてあって、全く違和感がないところが面白かったです。こういうのが地域をまるごとアートの舞台にしてしまう芸術祭の魅力ですね。

このメインエリアはわかりやすい。

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まあこのあたりもわかる。

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ここってふつうにおばあちゃんの畑ですよね?あれおばあちゃんの飼ってる動物じゃないよね?

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茨城県は、越後妻有にあるような急峻なエリアの棚田ではなく、このような段々になっていて見晴らしの良い場所が多いとのことで、実は茨城がアート作品の舞台になったのはこれが初めてではなく、今から25年も前の1991年に、クリストとジャンヌ=クロードによる「アンブレラ」プロジェクトという、茨城県常陸太田市から旧里美村に横断する水田地帯に1,340本の青い傘を、カリフォルニア州南部のカーン郡からロサンゼルス郡の砂漠地帯に1,760本の黄色い傘を18日間にわたって設置したプロジェクトを行っていたそうです。

「最近なんか芸術祭ブームで、茨城もそれに乗っかっただけじゃないの?」なんて思っている人も多いと思うのですが、直島のベネッセハウスのミュージアムができたのが1992年、越後妻有トリエンナーレが始まったのが2000年であることを考えると、むしろ茨城県の方が地域でアートに取り組むというのは先だったとすら言えると思います。県の方がおっしゃっていた「当時の記憶がみんなの中にあることが、このプロジェクトを進める上で、またアートの持つ可能性について地域と話をしていく上で大事なファクターだった」というお話の通り、やはり土地の記憶、人々の記憶というものはきちんと受け継がれていくんだなと改めて思いました。

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当時の写真などが、とある場所に残っていました。この写真を見るだけでも、間違いなく壮観だったろうなと思います。

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次のVol.3は、最も奥まった山側にある大子町エリアです。

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